研究概要 |
1.pn接合構造を内包した二層カーボンナノチューブ(DWNT)創製へ向けて,アルカリ塩であるヨウ化セシウム(CsI)を用いてアルカリ-ハロゲンプラズマを生成し,DWNTへのヨウ素(I)負イオン,セシウム(Cs)正イオン照射実験を行った.さらにそのDWNTを用いて電界効果トランジスタ(FET)を形成することにより原子内包DWNTの電気特性評価を行った.純粋な半導体性DWNTは両極性の伝導特性を有するが,DWNTにアルカリ金属であるCsを照射,内包させることによりn型の特性へと変化することが分かった.これに対して,アルカリ-ハロゲンプラズマを用いIをDWNTへ内包させることでより強固なp型伝導特性が得られることが本研究により明らかとなった.これはCs,IがそれぞれDWNT中で電子ドナー,電子アクセプタとして機能していることに由来する.以上の結果をもとに,pn接合構造形成のためプラズマ中に導入したDWNT塗布基板への印加電圧を制御しIイオン,Csイオンの順次照射を行った結果,特定の印加電圧極性時にのみ電流の流れるダイオード的な整流特性が確認され,一次元pn接合素子の創製に成功した. 2.金属特性を示すDWNTにC_<60>を内包し,そのドレイン-ソース間の電圧V_<DS>-電流I_<DS>特性を調べたところ,電圧の増加に対して電流が急激に減少する負性微分抵抗(NDR)特性が室温において観測された.これは,DWNT内で直径0.7nmのC_<60>が量子井戸を形成したことに起因すると考えられ,C_<60>内包DWNTが量子効果デバイスとして有用であることを示している.さらに,高次フラーレンを用いることで,NDRが生じる閾値が内包するフラーレンのサイズにより変化することを明らかにした.
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