研究概要 |
修飾ピリミジン塩基を有する二本鎖DNAを用いて任意の金属イオンを選択的に検出する技術を開発する目的で、4-位アミノ基に種々の側鎖を有する2'-デオキシシチジン誘導体、4-位にアルキル基を有するピリミジン誘導体の合成研究を行った。2'-deoxyuridineを出発原料とし、定法に従って糖部水酸基保護体とした後、塩基部4位トリアゾール体へと誘導した。このものをエタノールアミンで処理して、N4-(2-ハイドロキシエチル)シチジン体とし、水酸基をリン酸トリエステルとした。また、上記のトリアゾール体をエチレンジアミンで処理し、N4-(2-アミノエチル)シチジン体としたのち、末端アミノ基を利用して2,3-ジヒドロキシ安息香酸を縮合した。これらの新規ヌクレオシド誘導体はDNA合成用のモノマーユニットへと誘導し、DNA化学合成に用いた。合成されたDNAは、定法に従って脱保護、精製し、塩基部にリン酸ジエステル基を有するDNAアナログ、ジヒドロキシベンゼン基を有するDNAアナログとした。これら修飾DNAの構造は質量分析法、及び、酵素水解により得られたヌクレオシド残基のHPLC検出により確認した。塩基部にリン酸ジエステル基を有する修飾DNAの形成する二本鎖構造(DNA duplex)の熱安定性を熱変性法により検討したところ、天然型duplexに比較して熱安定性が低下した。この不安定化は、リン酸ジエステル基の負電荷の反発によるものと考えられる。金属イオン存在下では、金属イオンの正電荷によりリン酸ジエステルの負電荷の反発が解消され、duplexの熱安定性が向上すると期待した。種々の金属イオンを添加して熱変性実験を遂行したが、duplexを大きく安定化する金属イオンを見出すには至っていない。一方、4-メチルピリミドンとリボースのカップリングにより4-メチルピリミジンヌクレオシドとし、さらに2'-水酸基を還元的に除去して2'-デオキシ体とした。現在、メチル基のカルボン酸への酸化、さらに種々の官能基への誘導を検討している。
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