(i)シリコン基板への異方性エッチングによって、直径20pmの細孔(ナノボア)を作製した。ここに、ポリスチレンビーズを通過させ、通過信号を得ることができた。直径200nmのナノボア作製にも成功したが、十分な感度が得られず、DNA一分子の検出には直径20nmの細孔が必要であることが分かった。また、平行して、電子線描画により幅数百ナノメートルのナノチャネルを作製し、通過するDNAの電気計測を試みたが、電気信号のノイズが大きく、DNA分子と断定できる信号は得られなかった。計測環境や周辺機器の改善によって、バックグラウンドノイズを落とすことが必要とわかった。 (ii)シリコンナノピンセットを用いて、生体分子由来の微弱な信号を検出するために、増幅器など外部周辺機器を整え、LabViewにより簡便に制御するシステムを構築した。この結果を、Journal of Microelectromechanical Systems誌に発表した。ナノピンセットに捕獲したDNA東の電流値と湿度の関係についても、Biophysical Journal誌に掲載した。また、DNA以外の分子捕獲にも取り組み、微小管やアクチンフィラメントなどの長鎖の高分子も、DNAと同様に、交流電圧印可によって捕獲することができた。一方で、ピンセットでDNA一分子の力計測を達成するために、捕獲するアームを原子間力顕微鏡のカンチレバーのように、非常に薄く柔らかく設計した。作製したピンセットのアームの幅は、5μmであり、バネ定数はK=O.2N/mであった。この場合、10-20本程度のDNA分子の力計測にとどまるが、幅2μmのアームの場合、バネ定数は0.01N/mとなり、一分子の力計測が可能である。この結果については現在、論文執筆中である。
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