研究概要 |
非極性(B,Al,In,Ga)N窒化物半導体を用いた量子構造の形成と紫外・可視光発光デバイスへの応用を目指して研究を行っている。現在実用化されている青色・緑色発光ダイオードや紫色半導体レーザは、六方晶InGaNを活性層に用い、AlGaNおよびGaNとの積層構造を、極性のある(0001)c面に成長させている。これに起因して歪量子井戸には分極電場が発生するため、動作波長範囲の紫外線・赤外線領域への拡張を妨げている。 本研究では、この問題を回避するため<0001>軸が成長面内にある非極性m面(10-10)やa面(11-20)上への量子井戸や素子構造の作成を通じて、高効率紫外および長波長発光デバイス実現への指針を与えることを目指している。 このため、今年度は有機金属化学気相エピタキシ(MOVPE)装置を用いて(1)積層欠陥・貫通転位が低減された非極性m面GaN基板上へのGaNおよびInGaN薄膜成長を行い、成長圧力や成長温度、III族原料(TMGa)とV族原料(アンモニア)の供給モル比(V/III比)等の変化が、成長層の転位密度や表面形態、フォトルミネッセンス特性に与える影響を評価した。その結果、低転位密度基板を用いることにより、極性c面と同程度のクオリティを持つ薄膜成長が可能であることがわかった。特に低温のフォトルミネッセンススペクトルには明瞭に励起子構造が現れており、光学遷移の選択則が認められた。
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