本研究の目的は、1)ダイズの形態形成やストレス耐性におけるジャスモン酸(JA)の役割を、JA生合成に関与する遺伝子の機能解析から明らかにすること、2)ダイズの開花に関わる遺伝子、特にシロイヌナズナなどで開花を誘導することが知られているFT遺伝子に着目して、それらのゲノム上の位置や発現様式を明らかにすることである。 全体で、10個の機能を有すると考えられるFT遺伝子が同定され、それらの連鎖群上の位置が決定された。短日条件下および長日条件下における発現様式を解析した結果、それらのうち、二つのコピー(FT2CおよびFT5A)の発現が短日条件下で著しく増加し、短日作物であるダイズの開花にとり重要な働きをしていると考えられた。 感光性を欠落した二つの遺伝子の劣性ホモ型(e3e3e4e4)では、長日条件下においてもFT2CおよびFT5Aの発現が高く、これら二コピーがダイズの開花に取り重要であることを示唆した上記の観察結果を支持した。 一方、縦列重複している二つのコピー(FTlAおよびFT1B)は主に長日条件下で発現していた。両者は、伸育性に関与するDt2遺伝子の近傍にマップされ、Dt2遺伝子の候補とみなされる。ハロソイ(dt2を有する)とそのDt2のアイソラインのこれら遺伝子の塩基配列を比較したところ、いずれも第4エキソンにアミノ酸置換が認められた。 これら単離された遺伝子の機能を明らかにする目的で、シロイヌナズナに遺伝子導入を行い、種子を得た。これらの形質転換個体の解析より、ダイズにおける形態形成、特に、栄養成長から生殖成長への転換に関するFT遺伝子の機能が明らかになると期待される。
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