研究概要 |
筋肉は動物の動きを司る基本的な器官でその生理および代謝は生命の根幹をなす。一方、産業的に重要な生物種で筋肉は可食部のほとんどを占め、食品化学的見地からも重要な器官である。このように基礎および応用の両面で重要な筋肉であるが、発生や発達の機構は長年の多くの研究にもかかわらず、未知の部分が多く残されている。そこで本研究では脊椎動物の中で最もゲノムサイズが小さく、遺伝子解析が容易であるトラフグを対象に、従来からの生化学的手法に加え、分子生物学的技法をも駆使し、筋肉の主要タンパク質であるミオシンの重鎖サブユニット(MYH)をコードする遺伝子(MYH)の諸性状を調べることで、筋線維形成機構を明らかにすることを目的とした。 トラフグ速筋型ミオシン重鎖遺伝子AYH_<M2528>およびMYH_<M454>,につき転写産物の発現状況を調べたところ、いずれも成体の外眼筋・速筋、遅筋に発現が認められた。また、MYH_<M454>,は腸にも発現がみられたが、胚体では転写産物はみられなかった。一方、MYH_<M2528>は胚体に発現がみられ、腸には発現がみられなかった。さらに、の5'上流域の配列をGFP遺伝子の上流域に組み込みレポーターベクターを作成し、メダカ受精卵にマイクロインジェクションで導入したところ、MYH_<M454>、ではいかなる部位でも発現は観察されなかった。一方、MYH_<M252>、は速筋で主に発現し、遅筋でも発現がわずかにみられた。さらに、をゼブラフィッシュ受精卵に導入したところ、MYH_<M2528>は目、顎、胸びれにも発現がみられた。これらの結果は、MYH遺伝子の発現調節領域が魚類間で共通しており、筋線維の形成機構に重要な役割を果たしていることを示唆する。
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