薬品化学教室では、基質遷移状態概念に基づいて、アスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤などのペプチドミメティックスのデザイン・合成・医薬化学研究を行って、高血圧、エイズ治療薬、アルツハイマー病治療薬などの創製を行ってきた。申請者は、基質遷移状態をミミックしたイソステアを導入したペプチドミメティック化合物のデザインと合成を行って構造活性相関研究を進め、病原体酵素活性部位をターゲットとした阻害剤の創製をめざした。 具体的には、筋ジストロフィー治療のため、放線菌由来ジペプチド系抗生物質ネガマイシンがジストロフィン発現に有効であることがわかっているのでネガマイシン誘導体の合成を行った。また、SARSコロナウイルスの3CLプロテアーゼ阻害剤のデザインと合成を行い小分子化と構造最適化を進めて、新しい病原体に対する治療薬の創製方法の確立を目指した。 1.N-Boc-2-aminoacetaldehydeを出発物質とし、不斉Michael付加反応、不斉アリルボレーション、マイクロウエーブを使用したルテニウム触媒クロスメタセシス反応により、(+)-ネガマイシンを8ステップ、収率42%で合成することができた。 2.トリフルオロメチルケトン基を有する20の新規グルタミンペプチドを、高効率6段階のプロトコールにより合成した。SARS-CoV 3CLプロテアーゼ阻害活性を検討中である。
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