研究概要 |
これまでアポトーシス誘導脂質として知られていたスフィンゴ脂質セラミドによる形質細胞膜でのミクロドメイン構造形成がどのような機構で進行し、リンパ球のFcγ受容体を介したシグナル伝達機構が如何にセラミドにより制御されるかについて研究してきた。その成果は、Abdel-Shakor.A.B.,Kwiatkowska, K.and Sobota, A.Cell Surface Ceramide Generation Precedes and Controls Fc γ RII Clustering and Phosphorylation in Rafts.J.Biol.Chem., Vol.279(35)36778-36787.(2004)に発表され、セラミドが従来果たしてきたアポトーシス誘導課程における意義とは異なる、新しい細胞増殖機構における役割を示唆する独創的な仕事と考えられる。我々の研究室でも、これまで、様々なアポトーシス誘導分子の活性化がセラミドの下流域で誘導され、細胞死が誘導することを示してきたが、近年、細胞膜におけるミクロドメインの解剖学的形成にセラミドが不可欠で、この際には、膜貫通受容体の性質により細胞死と細胞増殖のシグナル伝達のスイッチが入る可能性が考えられている。今回、ミクロドメインとして脂質ラフトとは構造が異なり、異なるシグナルに関連すると考えられるトランスフェリン(Tf)受容体の細胞内トラフィックにおけるセラミド、ならびにスフィンゴミエリン(SM)の意義を検討した。結果として、SMを産生することが不可能な白血病細胞WR/19L-SMS(-)では、SMS(+)に比べてTf受容体の細胞内取り込みが遅延することが判明し、白血病細胞でのclathri-coated pitsを介した増殖シグナルにSMSによるSM酸性が重要であることが判明した。
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