研究概要 |
食品由来の抗酸化性物質の摂取は各種の生活習慣病のリスクを低減するものと考えられている。しかし,1990年代に発表されたβ-カロテンの介入試験での否定的な結果及びその後の多くの研究から,抗酸化性物質の過剰投与はプロオキシダント作用により生体に障害を及ぼす危険性があることを示唆している。したがって,食品由来抗酸化性物質を効率的で安全に利用するためには,特に,摂取量あるいは生体内濃度に依存した生物活性の発現を解析する必要がある。本年度は培養細胞系におけるカロテノイド濃度が抗酸化性に与える影響について解析を行った。 培養i細胞としてはヒト肝癌由来HepG2細胞を用い,過酸化水素,メナジオンtert-ブチルヒドロペルオキシド(BHP)を酸化ストレス誘導剤として用いた。フルオレセイン誘導体の蛍光を利用した細胞内過酸化物の測定及びTBARSの蛍光HPLC分析にる脂質過酸化物の測定によって酸化をモニターした。水系に活性酸素を発生させる過酸化水素やメナジオンによって誘導される酸化ストレスに対してはカロテノイドは抗酸化性を示さず,より疎水性が高いBHPによる酸化ストレスに対しては抗酸化性を示した。また,ルテインはβ-カロテンより高い抗酸化性を示したことから,BHPが生体膜の表層に近い部位で酸素ラジカルを生成し,極性の高いルテインが効率的にラジカルを捕捉したものと考えられた。ルテインは10μM程度の濃度までは濃度依存的に抗酸化性を示したが,それ以上の濃度は培地への可溶化が困難なため検討できなかった。高濃度カロテノイドの適切な可溶化法を今後設定する必要がある。
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