研究概要 |
スペルミジン合成酵素を導入してスペルミジン含量が高くなっているセイヨウナシ#32と非組換え体である野生型の培養シュートを重金属であるカドミウム(150μM CdCl_2)、鉛(1,500μM PbCl_2)、亜鉛(1,500μM ZnCl_2)、そしてそれらの複合(50μM CdCl_2、500μM PbCl_2、500μM ZnCl_2)したストレスで21日間処理した。また、同様に、軽金属であるアルミニウム(30μM AlCl_3)の処理も行った。いずれのストレス処理においても#32、野生型ともに培養シュートの茎の伸長量や生体重の増加程度は抑制されるものの、#32では野生型に比べて有意に抑制程度が軽微であった。グルタチオン含有量を調べると、#32で明らかにストレス処理により減少していた。恐らく、グルタチオンは金属と結合することで害を避けている可能性が示唆された。また、グルタチオン還元酵素活性(GR)やスーパーオキシドデスムターゼ(SOD)活性、さらには膜の障害程度の指標であるマロンデアルデヒド(MDA)は#32で、より生存に有利な方向に変化していた。これらの指標は培養シュートのスペルミジン含有量と高い相関性を示した。即ち、スペルミジン含有量が高いほど、GRやSOD活性も高く、逆にMDAは低くなっていた。これらの結果から、スペルミジン合成酵素遺伝子を導入シテ、スペルミジン含有量が高まったセイヨウナシ#32では、酵素的、非酵素的な抗酸化活性の増加を介してストレスに強くなっていることが推察された。
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