ユーカリ林の菌根菌群集を調べるため、夢の島熱帯植物園、多摩動物園に植栽されたユーカリ林でサンプリングを行った。菌根を実態顕微鏡下で観察し、形態タイプによって類別。菌根からのDNA抽出、rDNAのITS領域をPCR増幅、アガロース電気泳動、シーケンスなどの基本技術の習得と解析を並行して行い、ユーカリ林から採取した菌根の菌種同定を行った。当初の予定よりも菌根菌の多様性が低く、同定できた菌種は何れもコツブタケ属(Pisolithus)に属していた。こうした予想外の結果から、同所の研究目的を達成するため、研究計画の変更を検討した。その結果、身近に利用できる苗畑のマツ幼木とそこに共生する菌根菌を使った実験的解析を行うこととした。 マツ幼木に共生する共生する菌根菌の機能的差異を明らかにするため、安定同位体標識実験を行った。東京大学農学部附属演習林田無試験地内の苗畑に植栽されたアカマツ、クロマツ2〜3年生苗の下に発生するキツネタケとクロトマヤタケを15N/13Cで標識したグリシンで標識した。標識直後から、1、3、5日後の時点に、標識個体から60cm以内に発生している子実体を位置を記録してサンプリングした。その範囲内にあるマツの葉のサンプリングも行ったほか、土壌試料もいくつか採取した。それぞれの試料は乾燥後、粉末化し、秤量を行い、その一部は安定同位体の分析を修了した。その結果、菌根菌の子実体間の物質移動が確認されたが、個体によって大きなばらつきがあることが明らかとなった。
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