永続的にサンゴ礁生態系を修復するためには、人の手を入れないで自立的に回転するシステムが必要である。本来、生物にはダメージを修復する能力が備わっており、サンゴにも様々な修復システムが機能している。本研究では、サンゴに共生している共生藻の光合成系修復システムの強化有効性と障害発生メカニズムを検討し、新しいサンゴ礁回復技術の開発を目指している。本年は、研究実施二年度目である。サンゴは高温によって白化することが知られている。ところが、高温による障害の原因は特定されていなかった。本年度は、細胞生物学的な実験によって、高温によるサンゴ白化原因の特定を試みた。その結果、サンゴ共生藻の一酸化窒素(NO)産生が温度上昇によって高まることを突き止めた。蛍光検出法と電気化学的手法により、共生藻のNO産生を調べたところ、亜硝酸を添加したときに顕著なNO発生が観察された。アルギニンを基質にした時の産生量は、亜硝酸を基質にした時の10%以下であった。各種阻害剤実験によって、NO発生源の特定を試み、硝酸還元酵素、ミトコンドリア、NO生成酵素のいずれも関与していることが明らかとなった。共生藻のNO産生は、強い温度依存性を示し、高温下で高い活性が見られた。この時、共生藻の光合成活性も温度依存的に阻害されたことから、過剰NO生産が障害原因であること結論づけた。以上の結果は、英文国際誌に掲載が決定している。
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