研究概要 |
植物ステロイドホルモンであるブラシノステロイド(BR)は植物の生長と分化において重要な役割を持つ。近年、BRの情報伝達経路の解明が進み、受容体(BRI1)やコレセプター(BAK1)、そして下流のBKI1,BIN2,BES,BZR1などの構成成分が同定された。しかし、BRI1タンパクレベルでの調節機構などの情報伝達経路の初期段階については未だ十分には解明されていない。そこで、申請者は遺伝学的アプローチでBR情報伝達の成分とBRI1調節因子の解明を試みた。これまでにBRI1タンパク発現量が低い変異体bri1-5を用いてBR情報伝達に特異的なsbi1(suppressor of bri1-5)を単離している。Sbi1は劣性で、sbi1単独変異体ではBRI1タンパク量が増加し、またブラシノライドに対する感受性が高くなることを示している。Sbi1単独変異体を短日条件下で栽培すると野生型よりも大きい表現型を示す。これは植物ホルモンの内生量の変化が影響している可能性が考えられた。そこで、私たちの研究室で開発した植物ホルモンの高感度一斉分析を液体クロマトグラフィー質量分析装置で行なうシステムを用いて、詳細な内生ホルモンレベルを測定した。その結果この突然変異体ではホルモンの内生レベルが野生種のように回復しているのではなく、予想されたように感受性が異なっていることが示された。その他の生理実験と蛍光タンパクを用いた実験から膜の物質移動にこの変異が関与していることが示された。
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