研究概要 |
バイオマスから生産されるエタノールを原料とする新しい化学プロセスを開拓することを目的として、気相でエタノールを分子状酸素と反応させて酢酸を一段で合成することを目標とした。そのために設計・試作した固定床流通式触媒反応器を用いて、種々の金属酸化物およびそれに金をナノ粒子として分散・固定した系について、CO酸化反応に対する触媒活性を測定し、エタノール選択酸化に有効な触媒のスクリーニングを気相反応の立場から行った。 一方、水溶液相でのエタノールの酸素酸化実験の結果、酢酸合成に相対的に有利な触媒としてAl_2O_3,TiO_2,Co_3O_4,NiO,CeO_2に金ナノ粒子を担持した系を見い出した。そこで、これまで金ナノ粒子の触媒としてほとんど注目されることのなかったCo_3O_4に焦点を当てて、その前処理の効果について調べた。その結果、雰囲気ガスの種類の影響が極めて大きく、中性(N_2またはCO in Air)ガス雰囲気150〜250℃で処理すると-80℃でもC0を100%酸化できることがわかった。さらに研究を進めたところ、Ni0についても同様な結果が得られた。その理由は中性ガス雰囲気中での処理により低温で脱離できる分子状と想定される酸素の吸着が促進されるためであることが判明している。この知見は卑金属触媒の開発にとって非常に重要であるので、酸化性や還元性ではなく中性ガスで何故そのようになるか解明することが重要である。 以上の結果に基づいて、エタノールの気相酸化反応に有望と思われる金触媒の開発に向けて、新しい境地を拓きつつある。今後はこれらの触媒活性と選択性についてC0酸化とエタノール酸化で比較を行い、新しい触媒を生み出す原理を抽出して行く計画である。
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