人間は時には自分の意図を正しく理解していないばかりか、自分の行動を説明するためのストーリーを「後付けで」構築する傾向がある.この現象を実験心理学的に調べることのできる「Choice Blindness(選択盲目)」現象の成立過程を調べるために、まず本年度はChoice Blindness現象がコンピュータ画面上(あるいはオンライン上)でも生起しうるのか、する場合にはどんな条件が必要なのかを調べた.その結果、コンピュータ画面上ではChoice Blindness現象が著しく起きにくいことを確認するとともに、その画面上に被験者の行動を促すエージェント(人物のアニメーションなど)を付け加えると、Choice Blindness現象が起きる確率が上がる事も分かった.このような知見は、Choice Blindness現象が「物理的な世界の安定性に関わる知識」と「対人関係における基本的信頼感」に基づいている可能性を示唆すると考えられる.この結果は、外国人特別研究員の経験のために国内の学会でするとともに、いくつかの研究会でも紹介した.また、コンピュータ画面を用いた実験でロバストに、Choice Blindness現象を再現できるパラダイムを模索するなかで、購買行動のシミュレーションを比較的自然なセットアップで行える実験方法を考案し、予備的な実験を行った.実験の結果、Choice Blindness現象を購買判断の場面でも再現可能であること、またその「後付けの理由」に関する操作も比較的容易にできる可能性を示唆するデータを得た.以上の研究成果は、国際学会および国内学会・研究会などで発表している.
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