培養細胞の状態を計測するために、マクロスケールの培養液中の物質を採取する方法では、十分短い時間間隔で長時間にわたるデータを取ることは不可能である。このため、マイクロ流体容器の中で少数の細胞を培養し、そこにバイオ化学センサを集積化することで、細胞が放出・吸収する物質を連続的かつ高感度で分析する必要がある。本研究では、バイオ実験に適した化学センサとして電気化学センサを選定し、細胞の活動に重要なカルシウムイオン濃度の選択的な測定を目指した。 ここでは膵島のベータ細胞(インシュリン分泌細胞)の活動に伴うカルシウム濃度変化の検出を目脂し、東京大学生産技術研究所藤井輝夫研究室のメンバーと共同で、マイクロマシン技術と半導体技術による電気化学センサの製作とその評価を行った。電気化学センサとして、イオン感受性電界効果トランジスター(ISFET)に着目し、半導体集積回路技術を用いたISFETアレイチップの作製を試みた。 20x20のISFETのアレイを4組搭載し、各々のセンサを選択して読み出す回路を含めたチップを共同研究者と一緒に設計した。東大に付属する高密度集積回路設計教育センター(VDEC)のCMOS集積回路試作サービスを利用してチップを製作した。ISFETの感応膜を付加してセンサとして使用できるように、完成したチップに後処理を行うプロセスを考案した。現在までに、ISFETトランジスターが滴下したイオンを含む水(水道水)に反応すること、アレイ中の個別トランジスターを選択して読み出すことが可能なことを確認した。
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