IRFファミリーはウイルスなどの病原体感染における免疫系賦活化に重要な転写因子であり、中でもIRF5は病原体認識受容体であるToll-like receptor(TLR)刺激によって活性化され、IL-6などの炎症性サイトカインの誘導に重要な役割を果たす。一方で、IRF5はp53の誘導遺伝子であるとともに、DNA傷害によるBcl-2の転写誘導に重要である事が報告されており、さらに近年ウイルス感染時のアポトーシス誘導にIRF5が重要な役割を果たすことも明らかとなりつつある。 本研究ではウイルス感染によるアポトーシス誘導がIRF5によってどのように制御されているのか明らかにするため、IRF5欠損マウスの解析を行なった。昨年度までに、Fas依存的アポトーシスにおいてIRF5が重要な役割を果たし、IRF5欠損マウスがFasリガンド投与によるショック死に耐性である事を明らかにしている。これらの成果をもとに本年度においてさらに解析を行なった結果、IRF5欠損マウスでは肝臓の細胞におけるFasシグナル伝達経路のうちJNKを介するシグナルが減弱していることを見出した。また肝臓細胞のみではなく他の免疫応答関連細胞についても解析を行った結果、樹状細胞をTLR9のリガンドであるCpG-BDNAで刺激するとFas感受性の亢進が起こることを見出した。この反応はIRF5欠損細胞では誘導されず、IRF5がFasによるアポトーシスの感受性を調節していることが示された。この結果はIRF5がFas下流シグナルに関連する様々な遺伝子の誘導を制御する事で、Fasによるアポトーシスの感受性をコントロールし、特定の細胞にのみ選択的な死を誘導することを示唆している。 本研究助成は最終年度となったが、今まで得られた貴重な結果に基づいて、今後IRF5の標的遺伝子を特定し、IRF5による選択的細胞死感受性の制御の生理的意義についてさらに検討を行なう予定である。
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