日本産タナイス目甲殻類の分類学的研究を行い、モノグラフを作成すること及びタナイス類の環境指標生物としての利用の可能性を調査することが本研究課題の目的であった。日本近海のタナイス類の研究は遅れており、まずは分類学的研究を行うことが急務であった。 昨年度に引き続いて、分類学的研究の成果をモノグラフシリーズの第3号と4号として出版した。これらの中で日本近海の深海域から21種を新種として記載を行い、5種を再記載した他、沖縄県阿嘉島の浅海域から2種を新種として記載した。また、阿嘉島臨海研究所を拠点にタナイス類の環境指標生物としての利用の可能性について研究を行った。水深約6メートルの砂地に無生物状態の砂を入れたセディメントトレイトラップを7週間設置して、トラップ内の砂にどのような種がどれだけの数移植するか調査した。同時に比較のためにトラップ設置場所周辺のかく乱されたエリアや自然状態のかく乱されていないエリアのタナイス類の種組成、種数についても調査した。その結果、住管を作らないタナイス(Parapseudes arenamans)と住管を作るタナイス(Paranesotanais longicephalus)が採集され、前者の方が後者よりも群集の再形成速度が速いことが示唆された。しかし、Parapseudes arenamansは群集再形成をはじめたばかりであり、本実験で設定した7週間は短すぎることが判明した。
|