都市の密度と交通の関係についての文献調査、ホーチミン市・ハノイ市における都市開発プロジェクトに関する現地調査と関連資料(土地利用計画、都市開発規制に関するデータ、両市のマスタープラン、都市環境汚染報告書など)の収集を行った。また、入手したデータを用いてGISデータベースを構築し、土地利用、被覆変化分析のため、リモート・センシングの利用に関する検討を行った。以上の研究を通して、以下の知見が得られた。 ・都市化:特にホーチミン市の都市地域において、インナー・シティにおける居住人口の減少と郊外部での人口増加がみられる。この傾向は新規の都市開発プロジェクトによる面が大きい。インナー・シティでは土地と住宅の価格が高騰し、低所得者層の郊外への移動を促している。 ・都市政策:市当局は北部に衛星都市を建設する計画があるが、社会基盤の能力を超えている。同時に、計画ではインナー地区における再開発を促進している。交通マスタープランでは、交通渋滞緩和のための公共交通システムが提案されており、都市構造はコンパクトな形態から交通軸に依存した形態に変化しつつある。 ・都市外縁部における土地利用変化:都市外縁部では農地の他用途への転換がいたるところで起こっている。適切な土地利用コントロールとマネジメントの欠如により、民間投資による都市プロジェクトによってマスタープランに従わない土地利用変化が引き起こされている。 ・組織の能力の問題:都市計画制度は地方分権化に伴って改善されてきたが、詳細計画、開発コントロールの担当者の経験、専門的能力の不足が無秩序な建設、開発に繋がっている面がある。 ・空間的変容の課題:国内外からの開かれた投資を促進する政策により、住宅部門における投資が増え、閉ざされたコミュニティの増加に繋がっている。低所得層は周辺部に移動せざるをえず、このことが都市郊外部での高い住宅需要を生み出している。
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