2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した中国は、その後も順調な経済発展を続け、今や貿易量では米国、ドイツに次ぐ実績(2005年時点で輸出・輸入ともに世界第3位、ちなみに日本はともに第4位)を挙げるに至っている。このことは、世界経済の成長に大きく寄与し、世界における中国の政治的経済的地位の向上に役立ったが、地球環境問題が深刻化し、地球規模での富・資源の偏在や食糧不足が問題とされるに至った今日、果たしてこのような成長路線は維持可能なのであろうか。この研究においては、中国が今後も持続可能な開発(sustainable development)を続けることができるのかについて国際経済法の観点から実証的な分析を行うことを目的としている。このため、持続可能な開発に関する研究業績において定評のある国連大学高等研究所の人材・資料を最大限活用して研究を進めることとしているが、平成19年度も、前年度に続き、研究の基礎となる資料を収集することに力点を置いて活動した。 具体的には、貿易と環境に関連するWTO(及びその前身たるGATT)の紛争解決事例の分析を引き続き進めるとともに、WTO加盟後の中国の各種政策の実態を把握すべく、内蒙古自治区及び北京において現地調査を行った(平成19年4〜5月及び同年11〜12月)。また、世界銀行本部において中国人スタッフを中心に中国における持続的開発に関するシンポジウムが開催されたので、これに参加し貴重な資料を得ることができた(平成19年10月)。
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