研究概要 |
完全発達した平行平板間チャネル流れにおいて,層流-乱流間の遷移域を含む低レイノルズ数の直接数値解析を行い,流動特性および伝熱特性を評価した.本年度は,従来まで詳しく研究が行われていないレイノルズ数域(摩擦レイノルズ数で80以下)において,最大で327δ×2δ×128δの計算領域を用いることにより,強い乱流域と準層流域が空間的に偏在する間欠性(パフ現象)を捉えることに成功した.その際に,並列処理の効率化を図り,格子点数800万点以上(CPUメモリー200GB程度)からなる計算領域を用いたことで,周期境界条件が及ぼす乱流現象への(非物理的な)影響を無視できるほどの大規模計算を実施した.チャネル流れにおけるパフは,円管内流れに観察されるパフと同程度のレイノルズ数域で発生すること,さらに円管内流れとは異なり主流・スパン方向に対して一定の角度で斜めに乱流パフが発生することを見出した.パフが発生することでより低いレイノルズ数まで局所的に乱流を維持し,熱伝達促進の効果が見受けられ,遷移域のパフの把握は熱流動特性の評価において重要であることが分かった.実験室実験によるパフ検証のために,計算結果の比較対象として可視化・PIV実験系の構築を進めた. チャネル乱流において異なる速度境界条件(クエット流れ)では,低レイノルズ数においてパフとは別に非常に大規模な構造が存在する.この構造抽出にPOD(固有直交分解)法を適用し,大規模構造のスケール・形状・エネルギー含有率の評価を行った.さらに熱輸送や乱流混合のメカニズムの理解のため,直接数値解析による流体線・面の追跡を行った. これらの知見について広く国内外に公知し,専門的な意見を交換するため,本研究結果を国際会議や学術雑誌に投稿した.
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