酸化ストレス感受性タンパク質は、システイン残基のジスルフィド結合形成をON/OFFスイッチとして酸化還元状態を伝達するセンサー分子である。申請者は、食品成分によるセンサー分子の制御が疾患の予防に利用できるのではないかと考え、食品成分がセンサー分子に及ぼす影響を明らかにしようとした。 昨年度は、センサー分子の探索に適した食品成分の探索を行い、強力な薬理活性を示すことで知られるネギ属植物由来有機硫黄化合物diallyl trisulfideを選定した。本年度はdiallyl trisulfideの作用メカニズムをさらに詳細に検討し、抗がん作用や抗発がん作用などのいくつかの薬理作用を同定した。さらに、diallyl risulfideの細胞内ターゲットについて、いくつか示唆するデータが得られた。特に細胞骨格タンパク質チューブリンや抗酸化物質チオレドキシン等への作用は興味深く、diallyl trisulfideが示す抗がん作用と何らかの相関があるものと考えられた。今後は、diallyl trisulfideがこれらタンパク質の周辺のシグナル分子に及ぼす影響を解明する必要があると考えている。 さらに、センサー分子の網羅的な探索を目的として、酸化還元状態を検出できる二次元電気泳動法を確立した。酸化ストレス負荷/非負荷細胞の細胞抽出液を非還元状態ならびに還元状態の二種類で電気泳動した。銀染色法により可視化後、画像解析を行い、酸化ストレス負荷によって変動したタンパク質(=センサー分子)を検出した。その結果、負荷する酸化ストレスの種類により、得られるスポットに変化が見られた。現在、スポットに含まれるタンパク質の同定を続けている。
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