研究概要 |
脱分極波の形成とHoxファミリー遺伝子との関わりを検討するため,ニワトリ胚を用いて初期発生期に菱脳節の一部を欠損させ脱分極波への影響を解析した.これまでの国内外での研究結果によると,第3・5菱脳節に発現するkrox20遺伝子が脱分極波のリズムおよび振動形成に関わるとされているので,これらの菱脳節を取り除き,第8菱脳節の一部を欠損させることで脊髄とも分離させ,第6・7菱脳節のみからなる神経組織から電気記録を行った.その結果,脱分極波のリズム形成が乱れ,脱分極波発生の閾値以下で微小な神経活動が数多く見られた.しかし,第8菱脳節を残し,脊髄と連続した状態で第6・7菱脳節から発生する脳神経から記録を行うと,これまで報告されているような脱分極波のリズム形成阻害や振動形成阻害は見られなかった.また,発生後に閂の吻側で脊髄と切断してもリズム形成阻害や振動形成阻害は見られず,正常な脱分極波形成が見られた.これにより,脱分極波の形成は,菱脳節における特定の遺伝子発現の他にも,隣接する脊髄組織との連絡によっても調節が行われており,いずれか一方と接して発生すれば正常な脱分極波形成が行われることがわかった.このことは,本研究者と同じ研究グループによる研究結果である,脱分極波発生の始点が延髄だけでなく,脊髄の複数の部位に存在するということとも矛盾しない.今後は,脊髄のどの部位までの連続が脱分極波の正常な発生に必要とされるのかを調べると同時に,第7菱脳節よりも吻側から発生する脱分極波と,脊髄から発生する脱分極波との相同相違点について解析を進めていく.
|