研究概要 |
「繊毛虫における有性生殖開始の分子メカニズムの解明」を目的として、二種類の接合型と接合誘導物質(ガモン)から成る接合システムをもつブレファリズマを用いて以下の研究を行った。 接合開始のキーファクターであり、ブレファリズマ属内で種特異的な接合誘導活性をもつガモン1の作用機構を明らかにするため、ブレファリズマ属の2種(B. stoltei, B. americanum)で新たにガモン1遺伝子の全長を決定した。以前に単離したB. japonicumのガモン1アミノ酸配列と比較した結果、形態的特徴が似ている種ほどガモン1の相同性も高く、形態を基にした分類とガモン1アミノ酸配列の相同性が対応していることを示した。 糖タンパク質であるガモン1の糖鎖の役割を解析するため、N-結合型糖鎖切断酵素で処理したガモン1を精製し未処理のガモン1と接合誘導活性を比較した。その結果、酵素処理を行ったガモン1において弱い接合誘導活性が検出され、ガモン1の糖鎖は接合誘導活性に必須ではないが活性の強さ及び維持に影響を与える可能性が示された。 ガモン1遺伝子の発現制御機構を探るため、接合開始必須条件の一つである飢餓に関して、富栄養条件下にある細胞を強制的に貧栄養条件下に移すことにより、飢餓刺激の感知とガモン1遺伝子の転写開始との関連を調べた。 接合誘導時に特異的に働く遺伝子(接合関連遺伝子)を同定し、それら候補遺伝子の分子的特徴や発現パターンを解析した。さらに、候補遺伝子のうち接合型特異的な発現を示した遺伝子について、接合型決定機構との関連や接合誘導時の機能を探るため、ブレファリズマにおけるfeeding RNAi法を用いた遺伝子ノックダウンを試みた。 また、台北の中央研究院分子生物研究所にて、繊毛虫テトラヒメナを用いて接合時特異的な発現を示すKu相同遺伝子のノックアウト株を作製し、接合過程や接合型発現への影響を示した。
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