本年度は今までの研究成果をまとめることと、新しい史料調査を中心に活動を行った。まずは、計画通り農文協図書館にて、『和牛の流通経済』(1954)、『家畜の流通過程に関する調査』(1954)、『牧野高度利用のための社会経済的条件』(1959)、『畜産における家畜小作の位置とその解消に関する研究』(1957)、等の1960年以前における農業経済学の研究成果の資料複写を行い、一定の成果を収めた。当時の農業経済学者達は当初想定していた以上に、牛馬の売買流通過程を把握しており、詳細なデータを研究成果にしていたことが判明した。しかし、家畜の所有関係に関しては、ほとんど把握できていなかった様子を確認した。 次に、島根県仁多郡奥出雲町絲原記念館にて製鉄業関係史料の調査を行った。併せて附近の丸山家文書の史料調査も行ったが、当初の目論見は外れ、期待していたような牛馬に関する史料を見つけることができなかった。そこで、牛の多頭所有者であった岡山県後月郡高屋村高木家の史料群(岡山県立記録資料館所蔵)を調査することにした。その結果、高木家文書の中には、天明3年〜明治28年までの「牛売買預覚帳」が残存していることが確認でき、目下分析検討中である。併せて、明治17年畜産諮詢会(明治文献資料刊行会『明治前期産業発達史資料』第9集所収)の分析も行っている。 今まで行ってきた、家畜の生産と流通、家畜所有に関する研究成果は、「中国山地における牛生産と家畜小作」(投稿中)、「牛生産地域における家畜所有の歴史的展開」(投稿準備中)として、発表していく予定である。
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