昨年度までに白葉枯病菌において17個の新規タイプIIIエフェクターを同定していた。本年度は主として、これらのエフェクターに加え、新たに同定されたものの宿主への病原性への関与について検討を行った。 1.これまでに同定したタイプIIIエフェクターの全てについて、その変異株をマーカーエクスチェンジ法により作出した。得られた変異株の親和性イネ品種における病原性検定を行った結果、少なくとも8つのエフェクター変異株において野生株と比較して病原性に低下がみられることが確認された。このことから、これらのエフェクターは宿主への感染に必須ではないものの、その病原性に関与することが示唆された。一方、抵抗性(非親和性)イネ品種への接種試験を行ったところ、宿主の抵抗性を打破するものはなく、これらのエフェクターの非病原力因子としての機能はみられなかった。 2.エフェクターの植物細胞内における詳細な機能を解明することを目的として、モデル実験植物であるタバコを用いてエフェクターの一過的発現実験を行い、エフェクターの発現による植物への影響を検討している。そのうちの1つについては植物の抵抗性発現誘導への関与が示唆されるとの予備的知見を得ている。現在、本エフェクターの一過的発現による植物の既知防御応答関連遺伝子の発現パターンへの影響について調べている。また、併行してエフェクター遺伝子がゲノム中に組み込まれた安定形質転換イネの作出も試みている。
|