本年度は、先行研究の整理、量的調査の実施と質的調査を並行して実施した。 先行研究の整理に関しては、住民投票やNPOやボランティア、オンブズマンに関する理論的・実践的文献を整理した。また改革派知事に関する文献なども参照した。その際、地方政治におけるこれらのアクターの論理を説明する際にベックのいうサブ政治の議論が適応可能であることが明らかとなった。つまり、これらの活動は民主的手続きを経ないで社会の決定が下されるサブ政治への(広義の)異議申し立てであり、特に、低成長社会へと移行し、行財政改革が必要とされる状況下でのローカルな行政決定への民主主義的活動として理解できる(もちろん、それがパートナーシップという形で行政によって利用されていることは先行研究が指摘するとおりである)。このような仮説に基づき次年度以降、事例研究を進めていきたい。 また量的調査に関しては、大津市に居住する有権者を対象として、滋賀県知事選に関する調査を実施した。2006年7月におこなわれた滋賀県知事選挙では現職知事に対して新人で環境保護の嘉田由紀子氏が当選したが、ここでは嘉田氏当選を、環境意識の高まりだけでなく、滋賀県政の行財政改革を求める有権者の動きという観点から解明する予定である。データ分析を始めているところであり、次年度に分析結果を報告する予定である。 徳島の住民投票運動の事例に関しては、データ分析がほぼ終わり、さらに運動参加者へのインタビューを実施した(約20人)。中間的な知見としては、多くの参加者は政党政治やイデオロギーから距離を嫌悪している層であり、「みんなで決めよう」というスローガンだったからこそ参加したこと、である。これは、先行研究の整理で見られた点と整合しており、ポスト55年体制における新しい政治的活動層の特徴として指摘できると思われる。この点についても個別に分析結果をまとめたい。
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