研究課題
本年度は、ハーバード大学においてロボット制御用の触覚ディスプレイを製作し、それを装着した状態でロボットを操作できるマスタシステムを、モーションキャプチャminiBIRDを用いて作成した。このシステムの性能を確認するため、コンピュータ上のVR空間に人型ロボットの3次元CGによるシミュレータを構築し、そのロボットの皮膚にバーチャルな触覚センサを配置して、その出力を触覚ディスプレイにより操作者の腕にフィードバックする遠隔臨場制御システムを開発した。その結果、この触覚ディスプレイにより物体の重さの違いを感じ取れることや、物体の移動及び把持という作業の精度に、触覚ディスプレイにより有意差が出ることを確認し、このディスプレイが、操作者を拘束せず、ロボットの制御に有効であることを確認した。さらに、この実験により、2005年にMarc Ernst博士がNature誌で発表した、「人間の中枢神経系による視覚と触覚の情報処理が、ベイズ統計における最尤法に従う」ことが、有毛部皮膚を含めた腕全体でも成り立ち得ることを示すデータを得た。また、この触覚ディスプレイにおける滑り覚提示に使用可能なローラ機構「Omni-Ball」を開発し、それを用いた推進機構について発表した。一方、マスタシステムの構築や、それを用いたVR空間でのマスタ・スレーブシステムによる人間の視触覚情報処理体系の解析に時間を費やした結果、ロボットに対するセンサの配置やロボットの制御自体はVR空間における物理シミュレーションに留まり、実世界環境におけるスレーブシステムの新型触覚センサの開発や、滑り覚提示専用のアクチュエータの開発、及びHRP-2やHRP-2mという実際の人型ロボットの制御を行うまでには至らなかったため、次年度では主に、実世界におけるロボットの制御、及びロボットへのセンサ配置による高機能化に注力した研究を行う予定である。
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Journal of Robotics and Mechatronics Vol.20, No.1
ページ: 125-134
日本ロボット学会誌 Vol.26 No.6
http://biorobotics.harvard.edu/