日本語と(比較言語学的な意味で)同系である琉球語の研究を共同研究者とともに行った。具体的には琉球語南琉球(先島)グループ宮古諸方言のひとつである池間方言の音声データをフィールドワークを通じて収集し、その分析を行った。データの定量的分析はもっぱら五十嵐が行った。イントネーションの対照研究および類型論的研究に重要な示唆を与える発見があった。 Lexical toneを有するという点において琉球語池間方言は日本語諸方言と類型論的に共通している。また、この方言にはフットを基本とするリズム構造があり、この点において英語などのいわゆるストレス言語とに類型論的な類似性を指摘することができる。概して琉球語池間方言は、韻律現象に関する限り、ロシア語・英語などのいわゆるストレス言語と日本語(東京方言)などのいわゆるピッチアクセント言語の中間に位置する言語であると言える。前年度までにその調査結果を報告した日本語無アクセント方言(lexical toneを欠く諸方言)と並び、琉球語池間方言は、イントネーションを含めた韻律現象の対照研究および類型論的研究において重要な役割を演じる言語であることが示唆される。
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