研究概要 |
Epstein-Barr(EB)ウイルスが潜伏感染するがん細胞でウイルス産生感染へ移行すると、RB蛋白質は高リン酸化状態になりCyclinA(E)/CDK2の活性が維持され宿主DNA合成を伴わないS期様細胞環境となる。RPA(ヒト一本鎖DNA結合蛋白質)は3つのサブユニット(RPA1,RPA2,RPA3)からなる蛋白質複合体で、一本鎖DNAに結合する。複製では、その開始から伸長反応まで各段階で重要な働きを持つ。さらに、遺伝的組み換え、修復、遺伝子発現等、DNAを基質とするさまざまな反応に関与する多機能因子である。RPA2は特に細胞周期進行やDNA損傷存在化においてリン酸化されることがしられ、細胞周期制御、DNA損傷応答との関連が報告されている。ウイルス産生感染を誘導した細胞ではRPAのDNA結合画分への移行が観察され、ウイルス複製領域内にRPA複合体が局在していた。RPAはDNA損傷に応じてリン酸化されることが知られるが、ウイルス産生感染時においてもRPA2のリン酸化が起きていた。TUNEL染色像の解析やRPAリン酸化蛋白質によるEBウイルス産生感染誘導細胞核内染色により、ウイルス複製領域内にはリン酸化型RPA2を引き寄せる二本鎖DNA断端を多く含んでいることがわかった。また、同領域内にはMre11、NBS1,Rad51などのDNA修復(DNA相同組み換え)に機能する蛋白質の集積が認められ、EBウイルス複製領域ないにおいて宿主DNA修復機構によるDNA鎖切断の修復が行われていることが示唆された。
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