アオコ原因ラン藻Microcystis aeruginosaの種内には、肝臓毒ミクロシスチンの産生株があり、問題になっている。本研究では、毒合成遺伝子を標的とする定量的PCR法と分離株・現場クローンのITS領域の遺伝子タイピング法を用いて環境における有毒個体群をモニタリングし、水質パラメーターの推移状況、培養実験結果との摺り合わせから有毒個体群の消滅因子を特定する。また、特定個体群の殺滅因子として作用するシアノファージの影響も明らかにし、有毒アオコ防除法の開発を目指すことを目的としている。 本年度において、研究代表者は、福井県三方湖の湖水試料に対するITSクローン解析を行うことにより、M.aeruginosaが形成するアオコは、種として構成そのものは単一からなるが、遺伝的に多様な個体群から構成されており、時間的にその構成が変化することを明らかにした。さらに、現場試料について前に述べた定量PCRを用いて有毒個体群の動態をモニタリングした結果、M.aeruginosa群集内の有毒個体群の比率が上昇した時に、硝酸濃度が増加する可能性を示した。こうしたことから、各個体群は環境中の硝酸をはじめ物理化学的条件に対してそれぞれ異なる増殖生理を有している可能があると考えられた。これらの研究内容(ITSクローン解析結果を除く)については、国際誌FEMS Microbiology Letters誌に掲載された。また、ITSクローン解析より得られた成果については、第12回国際有害藻類会議より特別出版されるプローシーディングでの掲載に向け、現在、投稿・査読を経て受理される見込みである。以上のように、研究代表者は、世界をリードする成果を見事に成し遂げた。
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