前年度に引き続き、プラトンの初期対話篇から後期対話篇に、一貫して「探求」「学習」とは「思い起こすこと」であるといういわゆる想起説的モチーフを再確認しつつ、その意義の発見に努めた。プラトン初期対話篇(『ソクラテスの弁明』『ゴルギアス』)にも想起説と軌を一にする文脈のあることを指摘した英語論文"Socrates's Avowal of Knowledge Revisited"が国際雑誌Hyperboreusに受理されたことはその成果の一部である。その他、欧米で有力解釈となっているプラトンのいわゆる発展的解釈に対しても、その論点先取的前提を確認する作業を行った(たとえば、ソクラテスとプラトンに一定の違いを見るアリストテレスも、プラトンの初期作品から後期作品へという執筆年代順に、二人の相違や、イデア論的発展を対応させ得るとは言っていないと思われる点など)。 関係学会への参加状況としては、ディオゲネス・ラエルティオス(『ギリシア哲学者列伝』第9巻)をテーマとしたメイウィークセミナー(於:英国 ケンブリッジ大学、5月-6月)、アスカロンのアンティオコスをテーマとしたセミナー(於:英国ケンブリッジ大学、7月)、心身問題をテーマとしたセミナー(於:英国エジンバラ大学、11月)、古代哲学フォーラム(於:京大会館、2007年9月、2008年3月)、関西哲学会(於:徳島大学、10月)に参加するとともに、京都でそれぞれプラトンをめぐるテーマで行われたG.E.R.Ferrari教授(UCバークレー)、金南斗教授(ソウル大学)教授の講演等に参加するとともに、各研究会参加者と意見交換を進めた。
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