インコ目における顎顔面形態の多様化プロセスを探るため、本グループの主要な系統を網羅する34種の組織サンプルからDNAを抽出し、ダイレクトシークエンス法により、ミトコンドリア12Sおよび16SrRNA遺伝子の塩基配列を決定した。これらおよびゲンバンクにすでに登録済みの塩基配列データを用い、最尤法およびベイズ法による分子系統解析を行い、インコ類の包括的な系統関係を調べた。得られた分子系統樹にそれぞれの種が持つ頭部形態形質データをマッピングしたところ、インコ類に特異的な構造が複数の系統で独立に進化した可能性が示唆された。インコ目種間での頭部筋・骨格系の発生パターンの比較から得られた結果を総合すると、本グループにおける特殊な頭部筋・骨格構造の平行進化の要因として、発生におけるモジュラリティーやヘテロクロニーが深く関与している可能性が示唆された。以上の研究成果は論文にまとめられ、現在国際誌に投稿中である。 ついで、鳥類一般における頭部筋・骨格系形態の多様化機構を探るため、実験および分子発生学的解析を行った。鳥類異種間で頭部神経堤細胞および頭部中胚葉細胞の交換移植を行い、それぞれの細胞群が種特異的な頭部筋・骨格系形態を構築する上でどの程度寄与するものなのか現在調べている。移植実験に用いるインコ類の受精卵の入手は季節的に限定される上、入手できる卵の数にも限りがある。また、インコ胚に由来する一連の細胞を特異的に標識する分子マーカーが完成していないなどの問題も依然として残っている。これらの問題を補うため、すでに実験系が確立されているウズラ(キジ目)-アヒル(カモ目)間の交換移植実験も同時に進めており、鳥類頭部筋・骨格系形態の多様化機構について予備的な情報が得られはじめている。以上の成果については第112回日本解剖学会(2007年3月、大阪国際会議場)で報告した。
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