1.京都大学医学部附属病院を受診した20名の統合失調症患者(年齢38.8±7.2歳、男性女性それぞれ10名、教育年数13.5±2.0年)と、年齢・性別・教育歴をマッチさせた健常被験者20名に対して、社会認知課題を施行した。社会認知課題として、表情から情動を読み取る課題と社会的文脈下にある人物の情動を推測する課題を用いた。精神科大学院生の協力で撮像されたMRI画像より、VBM法により健常対照群に比べて統合失調症患者群で統計的に有意に体積減少がみられる部位を全脳レベルで探索した。結果、左上・中側頭葉、内側前頭葉、右帯状回、両側下前頭回、右島の6ヶ所の体積減少部位が示された。社会認知課題においては、表情情動認知も社会文脈下情動認知のいずれにおいても健常者群と比して統合失調症患者群で有意に成績低下が認められた。さらに、統合失調症患者群の脳体積減少部位と社会認知課題の成績との相関を検討した。結果、社会文脈下情動認知の成績低下は、内側前頭前皮質の体積減少と関連していることが示された。すなわち、統合失調症患者にみられる日常生活場面での社会機能の障害は、情動的・社会的能力の障害がその一因となっていることが示された。そして、社会的文脈下での他者の情動認知能力の障害の背景には、内側前頭前皮質の病理が関与していることが示唆された。 2.この統合失調症の社会認知機能と脳の形態学的変化との関連についての研究成果を、Neuroimageに公表した。
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