第1年度目は、研究計画に従い、研究の基礎となるリスト・履歴表を作成した。さらにこれを活用して「晩清外交人材的培養」というテーマで学会報告と、「薛福成の〓緬界務交渉」と題する論文を発表した。リスト・履歴表については、東洋文庫、台湾中央研究院、中国第一歴史档案館、国家図書館などで蒐集した資料をもとに、清朝の在外公館員たちのリスト、履歴表を作成し、そのほか在外公館員の日記など彼らに関わる資料と関連づけた形で基礎データの整理を行った。この基礎データの分析を通じて浮かび上がった清末の在外公使館の実態に関して、その外交人材の育成機能と同時に、伝統中国の官僚社会に発展した幕友制との類似性という中国的特徴を明らかにしたのが、「晩清外交人材的培養」と題する学会報告である(「近代中国、東亜与世界」会議、於2006年8月17日)。ひきつづきこの基礎データをもとに、清末における外交人材の育成過程と中華民国期の外交とのつながりを、特に外務部期に行われた諸改革の背景や実施状況を中心に検討しており、その成果を論文として発表する準備も進めている。 1880年代から日清戦争にいたる時期の中国では、清朝外交官の在外活動・報告により、その「外交」観に変化が起こる。また在外公館員を中心に専門外交官の育成が意識されるようになるのもこの時期である。「薛福成の〓緬界務交渉」と題する論文は、そうした外交官の代表格である薛福成を中心に、在欧公館員の外交交渉を論じたものである。実際の外交交渉の経験を基に、彼らの間で専門外交官育成の必要性が認識されていく過程についても検討中であり、今年度中の発表を予定している。
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