最終年の本年度は、これまでの研究成果をまとめ、これを発表する機会にめぐまれた。昨年度より準備していた論考2本:(1)「在外公館の伝統と近代」(岡本隆司・川島真編『中国近代外交の胎動』、東京大学出版会、2009年4月)、(2)「外交制度改革と在外公館-日露戦争後の人事制度改革を中心として-」(森時彦編『20世紀中国の社会システム』、京都大学人文科学研究所、2009年5月刊行予定)を、諸先生方の指導を受けつつ、より完成度の高い形で発表することができた((1)はすでに刊行、(2)は現在校正中)。清末の中国では、外交は「夷務」の段階から「洋務」、「外務」の段階を経て、近代外交の受容に至るが、主に「洋務」期を扱った(1)は、近代外交受容において重要な役割を果たした在外公館を中心に、とくに外交人材の養成という観点から、「夷務」から「外務」に向かう過程をまとめた。(2)は、民国に活躍する近代職業外交官の登場にとって、重要な契機となった外務部期の人事制度改革を、在外公館の果たした役割を中心に論じた。拙稿は、中国における近代外交の受容過程における在外公館の果たした役割を明らかにし、そうすることで、清末以来の中国外交における制度的・人的連続性を確認した。この研究は、近年注目を集めている伝統外交と近代外交との関係を考察する上で、その基礎を提供するものと考える。 また、これらの成果をもとに、2008年度の東洋史研究大会で、「"外交官"の登場-清末外務部期における中国外交の変化について-」と題し、これまでの研究成果のまとめとなる報告を行なった。
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