2008年度は学会発表を三回おこなったほか、論文を一本執筆し、博士論文をオンデマンド出版の形式で公開した。学会発表については、6月に日本言語学会第136回大会で「チャック語における形容詞について」と題して発表をおこなった。これはチャック語において語類として形容詞をみとめるべきかどうかを議論したものである。結論としては、チャック語において形容詞的な語は、文中における機能にしたがって、名詞または動詞の下位類と位置づけられることをしめした。9月にはイギリス・ロンドン大学でおこなわれた第41回国際漢蔵語学会に参加し、"An overview of grammatical particles in Marma"と題する発表をおこなった。これはマルマ語にみられる文法的小辞を、ビルマ文語、ならびにビルマ語アラカン方言をはじめとするビルマ語諸方言と、主として形態的に比較したものである。1月にはインド・メガラヤ州の東北丘陵大学(NEHU)でおこなわれた第4回国際東北インド言語学会に参加し、"Notes on Usoi Tripura phonetics and phonology"と題する発表をおこなった。これはウスイ語における音声学・音韻論の概要をのべ、基礎語彙を周辺のボロ・ガロ系諸言語と比較対照し、音対応を整理したものである。論文については、12月に「ウスイ語文法の概要」が公刊された。これは、ウスイ語の音韻・形態・統語の各面について概要をしるし、民話資料を一編つけたものである。2008年3月に博士の学位があたえられた「チャック語の記述言語学的研究」については、6月にBook Parkからオンデマンド出版の形式で公開した。
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