研究課題
高速呈示中の視覚刺激の意識化には時間的制約があり、これを実験的に示したのが注意の瞬き現象(AB)である。頭頂後頭領域は注意配分に重要で、複数のイメージング・脳損傷研究によって、特に頭頂間溝近傍の神経活動がABに関与することが示唆されている。しかしながら損症例研究では行動に関わる脳領域の時空間的検討が困難であり、イメージング研究においては活動領域は相関による推測の域を出ない。これに対し、頭皮上に配置した磁気誘導コイルから、大脳皮質内に発生させる誘導電場で生じる過電流によって、一定領域内の神経細胞活動を瞬間的に撹乱させる経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いると、行動機能と神経活動の時空間的因果関係を詳細に検証可能になる。そこで、ABに対する頭頂間溝の役割を明らかにすることを目的としたTMS実験を行った。その結果、先行標的-後続標的SOAが720msの時、右あるいは左頭頂間溝に先行標的呈示後350msに単発のTMSを施行すると、統制条件であるCz(頭頂部)に施行した場合およびTMS環境模倣のみで実際の磁気刺激はないSham条件よりも、後続標的の成績に優位な向上が認められ、ABが縮小した。以上の結果は、両側の頭頂間溝活動がABの原因である注意の時間的配分に重要であることを示唆する。ABは注意を向けられたT1がT2処理に干渉することが原因と考えられているが、そのT1処理には300-400ms後の頭頂活動の関与が示唆されている。また、単発のTMSは、該当部位の神経活動にノイズを加えて撹乱すると考えられている。したがって、本研究では、T1処理のために注意を配分するIPS活動がTMSで妨害されたため、T1処理からT2処理への干渉が低下し、ABが縮小したと考えられる。このことから、両側の頭頂間溝活動が、視覚刺激の意識化をもたらす注意処理の時間的制約に関与していることが明らかになった。
すべて 2007
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Experimental Brain Research 178・1
ページ: 135-140