細胞内の各オルガネラ間のタンパク質の輸送は、あるオルガネラからタンパク質を含む輸送小胞が出芽し、次のオルガネラ膜と融合することにより行われる。低分子量GTPaseの一種ARFには6種類のアイソフォームが存在し、オルガネラ膜上のグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の働きにより活性型となり、輸送小胞形成を開始させる。一方、Rabは哺乳類には60種類以上が存在し、個々のRabは別個のオルガネラで機能する。特定のオルガネラ膜に結合したRabは、膜上に存在するGEFの作用で活性化し、小胞の特異的な繋留、ドッキング、融合などに働く因子を集合させる。 最近、FIP3/Arfophilin-1とFIP4/Arfophilin-2がそのC末端領域を介してRabllと結合する因子として同定された。さらにFIP3とFIP4はRabllだけでなくARF5、ARF6とも活性型特異的に結合することが明らかとなった。このことから、FIP3とFIP4は二つの低分子量GTPaseを介した経路を結びつけ、小胞輸送を調節する重要なタンパク質であると考えられるが、その生理的役割は不明である。 本研究では、FIP3とFIP4の機能、さらにはARF5/ARF6とRabllの間のクロストークを解明するために、まずFIP3とARF5およびRabllとの相互作用について検討した。その結果、FIP3はARF5およびRabllと異なる領域で結合し、FIP3はARF5およびRabllと同時に結合することを明らかにした。さらにCHO-K1細胞でFIP3はRabll依存的に核近傍のリサイクリング・エンドソームに局在し、ARF5/ARF6をリクルートすることを明らかにした。これらのことから、FIP3はARFとRabllと同時に結合することでリサイクリング・エンドソームを介した小胞輸送を制御すると考えられる。
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