地球表面の光環境を考える時、以下の3つの対象、太陽光、大気分子・大気エアロゾル、大気の流れ、とその間の3つの関係(プロセス)、光散乱、大気輸送、熱調節過程が重要である。本年度は光散乱過程と熱調節過程について解析に基づいて現象の解明を試みた。光散乱については窒素、酸素分子について7eV〜10000eVにわたるエネルギー域の吸収スペクトルを用いて屈折率とエネルギー準位との関係を解析することにより、屈折率の大きさは両物質の違いが顕著でない高エネルギーの準位が決定していること、また屈折率の分散は両物質の違いが顕著となる低エネルギーの準位が決定していることが分かった。さらにこの結果から考えられる一般的な結論として、気体の屈折率を主に決定づけているのは気体の電子密度であるということを明らかにした。 熱調節過程については地表付近でもっとも重要なものの一つである水平対流について研究を行った。本研究の独創的な点は水平対流の力学的構造を1年、1日の異なる熱強制に対する応答から解明しようとした点である。さらにさまざまな現象の含まれた観測データから興味ある現象のみを抜き出すために、水平対流が収束・発散場であるという特徴から必要な現象を抜き出すという手法を用いた。これにより1日周期の水平対流は1年周期よりインピーダンスが小さく、慣性振動が力学的に重要な役割を果たしていることが明らかになった。また日本列島スケールでも1年周期の対流が存在することを明らかにした。 さらに光合成生物誕生時(27億年前)の地球表面の光環境を知るために当時の太陽直達光スペクトルの計算を行った。これにより窒素が0.8hPa、二酸化炭素が5hPaの大気を仮定すれば直達光スペクトルのピーク波長は700nm程度となり、当時の光合成生物が光環境に合わせて吸収波長を選択した可能性が示唆された。
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