本年度は、3ヵ年の研究テーマである「需要構造を考慮した提携構造の分析」の分析ツールである協力ゲームの意義と有用性を検証し、確認することに焦点を当てた。 具体的には、協力ゲームとして用いられるモデルのほぼ大半を占める、「本質的ゲーム」(提携値が単独提携の値の和を超える前提を置いたゲーム形)の本質性、すなわち提携値の規模の経済性に関する検証を行った。 この仮定は理論研究において、あまりに当然のものとして扱われていたため、その意義に関する厳密な検証がなされてこなかった。今年度は、提携値の規模の経済性が、提携形成メンバの接触数の増加により根拠付けられることを経済学実験を通じて立証し、接触数の増加が提携値の規模の経済性を生み出すプロセスを被験者の行動分析を通じて明らかにした。 また、提携値の規模の経済性は、提携メンバを提携というシステムのサブシステムと捉える視点により、システム間の補完性を表現するものと捕らえることが可能である。このような視点に立ち、ある種の抽象的なシステムの組み合わせによるメタなシステムの形成をモデル化することにより、制度分析の有用なツールとして、協力ゲームを再考する研究を行った。特にシステムの実行化主体として認知的に限定合理的なエージェントを仮定することにより、制度形成・崩壊の動学的分析を行う為の基礎的なツールの開発を行った。
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