本年は、研究目的である、企業間提携の分析の基礎となる理論モデルの構築に努めた。具体的には、多市場接触の理論・多人数囚人的ジレンマの理論・再帰推論の理論・動学的協力ゲームの理論に関して、学会報告を通じ、モデルのリファインを行った。また、経済学実験、計算機実験を通じ、モデルの妥当性・頑健性のテストを行うと同時に、各モデルが如何に社会状況を描写し、社会問題の解決に貢献できるかの検証を行った。特に多市場接触の理論に関しては、過去二年の実験データの分析を行い、多市場接触理論が有効になる環境を経済実験によって明らかにした。この研究結果は、多くの学会を通じて報告し、経済学者、心理学者、理論生物学者らのコメントを下に論文の作成を行った。論文に関しては、現在審査中である。再帰推論・多人数囚人のジレンマについては、計算機実験を行った。結果の報告は複数の国内学界、国際学会で報告した。その結果をまとめ、来年度の初頭をめどに論文の投稿を行う予定である。動学的協カゲームの理論に関しては、モデルの含意をハイエクの自生的秩序論との関連について、ハイエク研究家との共同研究を通じて明らかにした。その成果については、すでに国内学会において報告済みであり、また、論文執筆も終了している。現在、投稿する論文誌を調査している段階であり、最適な論文誌に投稿を行う。ハイエクの概念に関しては、再帰推論に関する論文においても論じられており、計算機実験の結果はすでに出ているため、論文が完成しだい速やかに投稿を行う。
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