研究概要 |
これまでに当特別研究員が構築・整備した無尾種ホヤ・ナギサフクロボヤの約10万のEST情報を基に研究を進めた。 1.本種においては、脊索の前駆細胞が見出されるにも関わらずその分化はおこらない。脊索分化抑制の分子機構を解析すべく、有尾種カタユウレイボヤにおいて脊索特異的に発現することが報告されている35遺伝子をEST内より探索した。相同性の高い遺伝子が見出された場合、その最長cDNAの完全長を決定し、分子系統学的解析等によりカタユウレイボヤ遺伝子との相同性を検証した。その結果、少なくとも15遺伝子が本種の胚発生期に発現していることを明らかにした。 2.本種においては幼生筋肉の分化が抑制されている。これまでの研究により筋肉の収縮に必要な主要な遺伝子(筋肉アクチンなど)の発現が本種で抑制されていることを明らかにしてきた。今回、筋肉機能において比較的マイナーな機能をもつ遺伝子を探索し、(1)それらの遺伝子がカタユウレイボヤで筋肉特異的に発現していること、(2)それらの遺伝子のうち一部がナギサフクロボヤで発現していること、を確認した。このことより、この種において幼生筋肉分化抑制機構がかならずしも一様ではないことが示唆された。 3.また、ホヤ胚を用いた分子発生学実験、すなわち全載in situ hybridization(WISH),抗体染色,遺伝子機能解析などを行うに当たっては卵殻の除去が不可欠であるが、本種を含む無尾種においてはその手法が未だ確立できていない。当特別研究員はタンパク質分解酵素などを用いて除去の試行を行い、Trypsin消化による囲卵腔の拡張が、機械的な卵殻除去時間を大幅に短縮できることを見出した。現在、処理胚と卵殻未除去胚とのWISHの結果の再現性を検証中である。
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