これまでに、アルツハイマー病原因タンパク質であるアミロイドβタンパク質(Aβ)が、コレラトキシンの蛍光色素付加体(CTX-B)で染色したPC12細胞膜上で観察される、コレステロールリッチかつガングリオシドリッチな脂質ラフト様ドメインに特異的に蓄積すること、蓄積したAβはアミロイド染色色素コンゴレッドにより認識されるアミロイド構造を有していること、を明らかにしてきた。そこでまず、アミロイド線維形成の足場としてのガングリオシドリッチドメインの役割を検討することとした。アミロイド原性タンパク質であるグルカゴン、カルシトニン、β2-ミクログロブリン、アミリンの4種のタンパク質をPC12細胞に投与し、その蓄積を観察したところ、II型糖尿病患者の膵ラ氏島に蓄積するアミリンが、ガングリオシドリッチドメインに蓄積し、アミロイド構造をとることがわかった。これにより、ガングリオシドリッチドメインがAβのみならず、アミロイド線維形成の足場として機能しうることが明らかとなった。次に、脂質ラフトとしてのガングリオシドリッチドメインの有用性を検討した。脂質ラフトへ局在することが示唆されている神経成長因子受容体(TrkA)、上皮成長因子受容体(EGFR)を一過性にPC12細胞に発現させ、蛍光ラベル化したのち観察を行うと、ガングリオシドリッチドメインに選択的に分布することがわかった。また、マウスプロスタグランジンE2受容体EP3βサブタイプに関して同様に観察を行ったところガングリオシドリッチドメインへの選択的な分布はみられなかった。これらの結果はガングリオシドリッチドメインの脂質ラフトとしての有用性を支持する結果であると考えられるが、現在更なる詳細について検討を行っているところである。
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