本年度は、現代イスラーム金融に関する以下の3点について研究を行った。 1.イスラーム経済学および現代イスラーム金融研究の学説史的研究 20世紀以降のイスラーム経済に関する研究の潮流について、近年成長が著しい現代イスラーム金融に関する研究を含める形での学説史的研究を行った。そこでは、様々な研究機関等が出版しているイスラーム金融機関のリストから、どのようなリストアップがされているかを分析することで、現代イスラーム金融の定義にもいろいろな見方があることが判明し、そのことがイスラーム経済研究における様々な立場の反映であることが明らかにされた。 2.現代イスラーム金融理論の地域的差異についての研究 現代イスラーム金融の発展に伴って、様々な新しい金融商品の開発が求められてきたが、その開発過程においては、それぞれの金融商品のイスラーム法への適合性に関する論争が行われてきた。とりわけ、アジアにおける現代イスラーム金融の拠点であるマレーシアの研究者やイスラーム法学者の考え方と、中東地域におけるそれとは大きく異なる場合があり、両地域で用いられる金融商品にも差異が生じていた。そこで、それらの金融商品に対する両地域における議論を概観し、両地域で主張されている議論がどのような観点において異なっているのか、そして、どのような観点においては見方が共有されているかについて検討を行った。
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