研究概要 |
研究代表者が独自に提案しているNDVI時系列解析による作物分類・農事暦作成手法は,対象が全球で空間分解能1度,時間分解能1ヶ月である.そこで,より詳細なデータセット作成を目的とした農地情報取得調査を実施し,前述の手法を適用・検証した.調査項目は作付け作物・生育期間・灌漑実施の有無である.作物分類にはMODIS/NDVI(空間分解能250m)を使用し,この手法が高分解能NDVIでも適用可能であり,特に水資源管理の観点から重要となる灌漑を実施しているか否かの判断に有効なツールとなることを確認した.なお,農地調査は北タイメーワン流域および周辺域,地中海気候に属するトルコ・カイセリ地方,ギリシア・テッサリア地方で実施した. 研究代表者はGSWP2プロダクトとして10年分の全球陸面水文諸量(1986-1995)を算出している.本研究ではこの陸面諸量の統計解析により「地表面状態に着目すべき領域」を明らかにすることを目的としているが,年単位の解析では10年(10サンプル)は短い.そこで,長期間にわたる陸面諸量を得るべく,増田耕一博士の協力を得てJRA-25長期再解析プロジェクトによるデータセットを気象強制力とした陸面オフライン計算を実施し,1979-2004年の25年に及ぶ陸面水文諸量のデータを作成した.これらのデータセットの中でも特に土壌水分量に着目し,日平均値あるいは数日から10日程度の移動平均値のピーク時期がずれる(早まる・遅くなる),またはピーク時期の値の変動が大きい領域の抽出を進めている.さらに,陸面諸量の解析とは別に,気象強制力とNDVIの相関分析から植生状態に対する気象支配因子を推定した.今後は,降水が支配的な領域と土壌水分量の変動が大きい領域で,空間的・時間的広がりを考慮しながらそれらの相互関係を詳細に見いだしていく予定である.
|