研究概要 |
甚大な被害をもたらすメソスケールの異常気象,特に「集中豪雨」に対する短時間予測精度の飛躍的な向上を目的とし,研究に取り組んだ.手法は,観測情報を同化した数値モデルによる予測であり,観測情報の収集・モデルの開発・同化手法の開発が重要となる.本年度の成果として,第一に,観測情報に関して,梅雨および台風期におけるドップラーレーダー観測を実施した.沖縄県下地島に滞在し,観測データ(レーダー反射因子・動径風速)を収集した.また,偏波レーダーであるCOBRAのデータを収集し,2006年の梅雨期の降雨データを解析し,予報モデルへ同化するための素案を検討した.第二に,モデルの開発に関して,数値気象モデルである雲解像シミュレーター(CReSS)を導入し,従来のモデルであるMM5やαモデルと特徴を比較した.2005年の韓国での災害が起きた梅雨前線性の降雨事例について解析した.また,大気海洋の相互作用の検討のため,台風時の海面水温の低下が降雨に及ぼす影響について2003年の台風10号を事例に解析した.第三に,同化手法の開発に関して,様々な同化手法を比較検討した.手法として,4次元変分法,カルマンフィルタといった従来の手法に加え,ここ5年くらいに急速に理論展開されているアンサンブルカルマンフィルタを導入した.2003年の近畿地方の前線性の降雨事例を取り上げ,深山ドップラーレーダーおよび城ケ森レーダーの観測情報(レーダー反射因子・動径風速)をアンサンブルカルマンフィルタ手法によってデータ同化し,降雨予測を実施した.アンサンブルカルマンフィルタが4次元変分法に匹敵するデータ同化技術であることを確認し,降雨予測精度として同程度の結果を得た.また,次年度以降に実施する偏波レーダーデータの同化のために,非常に有利な手法であることを示した.ただし,同化期間・時間的軸に連続した同化方法に関しては,今後検討の余地が残された。
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