平成18年度においては、人工色素を作製する際の有機合成法に、応用が可能なツールの開発を重点的に行った。酵素の開発においては、色素骨格のC-20位に特異的にメチル基を導入するメチル基転移酵素BchUについて研究を行った。また、変異体作製においては、変異体BchUを生体内で発現する系の構築を行った。これらの具体的な内容を以下に記す。 1.有機合成法に応用可能な酵素開発とその反応系の検討 BchUの反応活性部位周辺の構造情報から、基質色素に結合すると予想されるアミノ酸残基を見出した。それらのアミノ酸の部位特異的変異体を作製することで、BchUの基質特異性を詳細に調べることができた。また、BchUを有機合成法に適応可能な反応系の検討として、この酵素をカラム樹脂に固定化させる系(BchU固定化カラム)の構築を行った。このことで、BchUの酵素反応を水溶液中で行い、反応生成物を有機溶媒で取り出すといった、酵素の能力を最大限に引き出し、かつ、最終的には有機合成の次反応に即座に供することが可能な反応系を確立することができた。このBchU固定化カラムは繰り返し使用することが可能であり、1回目の生成物の収率が約97%であったのに対し、4回目の収率は80%以上を保っており、その再利用性は高いことが分かった. 2.有機合成法の出発物質を提供する色素変異体の作製 上記で作製したBchUの部位特異的変異体を緑色光合成細菌内で発現する系を構築し、バクテリオクロロフィル(BChl) cとdの両方の色素を合成する変異株を作製した。これら2つの色素の比率は変異体によってことなり、様々な比率でBChl cとdを持つクロロゾームを作製することができた。これは即ち、クロロゾームライブラリーを生体媒体によって保持することを意味する。
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