平成19年度においては、昨年度に引き続き、人工色素を作製する際の有機合成法に応用可能なツールの開発を重点的に行った。酵素の開発は、色素骨格のC-20位に特異的にメチル基を導入するメチル基転移酵素BchUを用いて行った。この酵素のメチル化反応には、S-アデノシルメチオニン(SAM)からのメチル基の供給が必須である。このSAMのメチル基結合部位に、他のアルキル鎖を持つ化合物を調製し、それらを用いてBchUの酵素反応を行った。その結果、エチル基をもつ化合物を用いたときに、基質色素にエチル基が転移したことを確認した。これは、BchUを用いて、メチル基だけではなく、様々なアルキル鎖を導入できることを予想させた。現在は、エチル基が基質のどの部位に結合したのかを確認しているところである。また、変異体作製においては、有機合成法に有用な側鎖であるビニル基をもつ色素を蓄積する菌体の作製を行った。ある種の植物は、色素のC-8位のビニル基をエチル基に変える還元酵素をもつ。この酵素遺伝子と相同性の高い遺伝子を、安易に培養可能である細菌で見出し、その欠損株を作製した。このことにより、ビニル基をもつ色素を簡便に、且つ大量に調製することに成功した。
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