従来の異性交際に関する心理学的研究では、親密化過程と崩壊過程に関するモデルが別々に提出されてきた。そのため、いずれのモデルも関係の変化のダイナミズムを十分に説明できていない。そこで、本研究は異性交際中の感情に注目し、親密化過程と崩壊過程とを包含するモデルの構築を試みた。 本年度の研究の成果は以下の二点にまとめられる。 第一に、1968年から2003年までの36年間に発表された流行歌の歌詞内容に見られる恋愛の特徴を分析した。その結果、分析対象とした349曲中260曲(75%)が恋愛をテーマとしていた。これらの曲では、情熱感情や親和不満感情は数多く記述されていたが、尊敬・信頼感情や攻撃・拒否感情はほとんど見られなかった。さらに、年代による変化を検討したところ、「別れ」などネガティブな内容から「友愛的な交際」などポジティブな内容へと変化してきたことが明らかになった。 第二に、これまで実施してきた10の研究をまとめ、異性交際の親密化と崩壊に関する「異性交際感情過程モデル」を構築した。親密化過程では、異性の友人に代表される否定的感情が低下してから肯定的感情が高まるタイプと、恋人関係に代表される肯定的感情が高まってから否定的感情が高まるタイプとに分類された。一方、崩壊過程は、親密化過程と逆の方向に進む過程に加え、急激に関係が悪化するタイプが見出された。以上の成果は学位論文としてまとめられ、筑波大学に提出された。
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